国家の罠
佐藤優著@新潮社
もう、鈴木宗男事件を世間ではわすれられてて、おなじ穴の狢と思われていた、この人のことなんぞは、忘れてるんでしょうな。「外務省のラスプーチンと呼ばれて」と副題にあります。外務省に専門職員として就職し、機密を扱う仕事に従事。提供を受けた情報者の機密をどこまで守るか、背任罪で逮捕した検察官との丁々発止のやりとりは、手に汗握る。田中外務大臣は、いかに、とんでもない人物であったか、たとえば、アミテージ国務長官との面会すっぽかしは、就任お祝いにもらった胡蝶蘭のお礼書きが理由だった、とか、9・11のときのアメリカから得た機密情報をマスコミに公にしたりとか。
佐藤は、情報の提供を受けた以上、呉れた人の情報は守らねばならない、とか、検察官に語ることは、外務省の機密情報が公開されたときにも、検証されるとか、もう、情報を扱う人間の義理人情の機微が語られており、私は、すっかり佐藤のファンになりました。
田中、鈴木の争いについて、佐藤は、独ソ戦直前の国際情勢になぞらえ、田中はヒットラー、鈴木はスターリン、小泉をルーズベルト、外務省執行部をチャーチルにみたたて戦略をねるところがあり、そうか、むかしは、過去の事件に見立てて、自己の戦略をきめてたんだよな~と。年上の人が、なにかの反対運動をしていたとき、ある人に、「俺は黒田勘兵衛の役割を果たすから、お前は、秀吉として、指令をかけろ」と見立てていたことがあった。これは、共通に、歴史、講談を知ってないと、できないよね。国民が、こういう物語でもって、自己の戦略、未来を構想するのに、講談、浪曲、歌舞伎の果たしていた役割はおおきいはずだ。閑話休題。
でも後がつづかない(^^ゞ。
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コメント
おもしろい話をきかせてもらいました。
落ちが悠さんらしい。 まだ落ちでなかった? まだお後が隠れているの?
見立ては戦略にも用いるとは。。 こどもの遊びや擬似体験で使うことはありました。
投稿: びわ | 2005.04.15 23:59
勧進帳の弁慶、義経、義経が逃げ延びたのは富樫もいたからだ、って見立てとか、みんなはいろんな物語をもってたと思うんだけど、最近、やらないよね。みんな、いい人だらけになってきたみたい。
この本で、「権力を持ったものにお願いすると、自分の内部が壊れる」とかに、この人の倫理感の確かさを感じてます^^;。「内部が壊れる」っていい言葉っていいなぁって思って。
投稿: 悠 | 2005.04.16 00:20